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「ブロードバンドセミナー 2008」の模様

平成20年2月7日、大阪市北区のリッツカールトンホテル大阪で「ブロードバンドセミナー2008」が開催されました。第一部はNTTが本年3月に商用化開始予定の次世代ネットワーク(NGN )によって広がる可能性について事例を取り入れ紹介されました。第二部では3期12年にわたり宮城県知事を務めた浅野史郎氏が地方自治と民主主義についてわかりやすく解説されました。講演要旨は以下の通りです。

第一部 次世代ネットワークがもたらす可能性
西日本電信電話株式会社 理事 法人営業本部 
ソリューションビジネス部長 今泉正義氏

ICTで変化するライフスタイル
この20年間で情報通信の世界はインターネットが拡大し、ブロードバンドが普及するなど、大きく変化しました。さらに情報通信という産業が変化しただけではなく、日々のライフスタイルやビジネスモデルも大きく変わりました。

ライフスタイルでいうと、コミュニケーションの複雑化ということが上げられます。ブログやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、セカンドライフなど通信手段の変化を感じます。こういったことができるようになった背景にはコンピュータの性能の向上、通信回線の高速大容量化があげられます。

例えば消費者行動にも変化が見られます。マーケティングで知られる法則に「AIDMA」というものがあります。これはAttention(注意)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(購買)の頭文字を取ったもの。消費行動には、注意をひき、興味を持ち、ほしいという欲求があり、これを覚えておいて、店でものを買うという流れがありました。マーケティングも広告もそのためのものでしたが、最近はこれが「AISAS」に変化しています。
「AISAS」はAttention(注意)、Interest(興味)、Search(検索)、Action(購買)、Sharing(共有)の頭文字を取ったもの。注意、興味は同じですが、そのあとインターネットで検索し、価格やサービスを調べて購買します。そして、購入後の感想や印象をブログなどでインターネットに公開し、ほかの人と共有します。このことからSharingまでを意識したビジネス展開が重要になってくるわけです。

経営課題の改革にもICT
ビジネス面について、ICT業界で新たな展開をするのは当然ですが、ICTに直接かかわりのない業界でもあらゆる業務分野、会社経営においてICTを使った改革が行われてきました。企業のトップに聞いた「企業経営課題2007」によれば一番の経営課題は収益性の向上。そして人材強化、売り上げ・シェア拡大、品質向上、コーポレート・ガバナンス強化といったものが続きます。特に人材強化、品質向上、コーポレート・ガバナンス強化といったものが昨年ごろから関心事として上がっています。

これに対し、3年後はどうでしょうか。人材強化はさらに大きな課題となるでしょう。加えて新製品・新事業開発、企業の社会的責任(CSR)も課題として浮上してきます。特にCSRは自社だけでなく取引先に求めたり、取引先から求められたりするようにもなるでしょう。いままでCSRで取引先に求めること、求められることは、製品やサービスの品質、安全性の確保や適正な購買取引などが中心でしたが、今後はコンプライアンスなども求められると考えられます。さらに人権尊重、環境保全など様々な要件に対応していかなければいけません。

特に情報通信関係で深く関わってくるのが事業継続計画(BCP)、情報セキュリティ対策。しなければいけないことが非常に増えています。取引先にBCPを持つよう要請している企業は全体の約10%ですが、製造業では14.9パーセントと、非製造業の7.3パーセントに比べて割合が大きくなっています。特に自動車関連では57.6パーセントがBCPを要請しています。

また、昨今頻発しているのが情報漏えい。紛失や置き忘れ、盗難、誤操作、ワーム・ウィルス、管理ミスなど様々な原因がありますが、企業にとって一番のダメージになるのが内部不正行為。まとまった量が流出するため、大きな影響を与えます。また、外部からの不正アクセスで恐いのは踏み台にされる場合。第三者に被害を与えるため、被害者でありながら加害者にもなってしまいます。情報漏えいは毎日必ずどこかで起きていますが、これを防止する環境が整わなければ新たなビジネスを展開する上でも不安がつのります。

そのほかワンクリック詐欺やフィッシング詐欺などネット上にはたくさんの危険がありますが、それを排除できる仕組みが必要です。誰もが安心してネットを使えるセキュアなネットワーク環境が求められています。

新たなビジネス基盤を提供するNGN
こういった世の中の安心、安全なITCビジネスの環境として次世代ネットワーク(NGN)に取り組んでいます。従来の電話網は集中・管理型、インターネットは自律・分散型でした。これに対し、NGNは双方の長所を兼ね備えたもので、電話網の品質や信頼性を継承しながら、セキュリティ対策などの課題を克服、新たなビジネスの基盤を提供するものです。

NGNには4つの大きな特徴があります。
1.品質保証(QoS)
エンド・ツー・エンドの通信品質制御、特徴の異なる4つの品質クラスの提供

2.セキュリティ
電話番号やIPアドレスのチェックによるなりすまし対策 ネットワークの出入り口で異常なトラヒックをブロック

3.信頼性
通信装置単体の高信頼化、冗長化 トラヒック制御(輻輳制御)

4.オープンなインターフェース
様々なプレイヤーがネットワークを活用して多彩なサービスを提供でき、他の事業者との相互接続ができるオープンなネットワーク「QoS」の中の「4つの品質クラスを提供」という点については、最優先クラス、高優先クラス、優先クラス、ベストエフォートの4つのクラスを提供します。道路でいえば最優先クラスはバスレーン、ベストエフォートは一般道のようなものと考えていただけばいいでしょう。

「信頼性」に関しては、特に輻輳制御について、輻輳の原因は災害やイベントによる電話の一時的な集中、DOS攻撃、停電後のネットワークの一斉復帰など様々です。これに対し技術的にコントロールするよう取り組み、信頼性の向上に努めています。

NGNにはISPアクセスやCUG(closed user group)サービスを提供するユーザ・ネットワーク・インターフェース(UNI)、他の通信事業者とつながるネットワーク・ネットワーク・インターフェース加え、アプリケーション層とつながるアプリケーションサーバー・ネットワーク・インターフェース(SNI)があります。このSNIが新しい部分で、世の中の新しい仕組みと連係したオープンなインターフェースです。

社会問題を解決するNGNのテクノロジー
NGNのネットワークサービスに関しては様々なトライアルが行われており、今年の3月からスタートするものもいくつかあります。そのひとつが高品質のひかり電話。標準品質に加え、高品質7kHz(AM放送レベル)のサービスも開始します。また、ハイビジョン品質のテレビ電話も予定しています。

「地デジIP再送信事業者向けマルチキャスト」は地上デジタル放送のハイビジョン映像をNGNを通じてIPでテレビ向けに配信するもの。電波の届かない地域にも地上デジタルを伝送できるので、地域間格差を解消できます。「遠隔病理診断支援システム」(トライアル)は病理医が検体の顕微鏡動画像を遠隔で診断するシステム。病理医の不足を補い、遠隔医療や予防医療の効率化、迅速化に貢献します。

「デジタルシネマデータ配信」はすでに一部の映画館で運用が始まっています。いままでのフィルムによる配給方式では映画を編集後フィルムにコピーし、現金輸送車並みの警護を付けて各映画館に配給し、公開が終了すると回収して裁断、廃棄していました。これをすべてデジタル化にすると、フィルムコピーは不要、データも送信するだけでよいため、従来非常にコストのかかっていた配給が不要になります。また、映像も鮮明で劣化せず、データの廃棄も簡単です。そのほか鮮明なで詳細な航空写真も配信できる地図情報システム、在宅クリエーターを支援するテレワークなどの取り組みを提供しています。

NGNは信頼性の高い社会インフラとして、お客様には安心・安全でもっと楽しく、もっと便利なネットワークをお届けするほか、ビジネス面では新たなビジネス機会の創出や生産性の向上、市場の変化に対応できる環境を提供いたします。さらに、社会に対しては経済成長の基盤となり、少子高齢化や介護・医療・教育の充実、大規模災害への対応など、社会問題への対応も可能にするネットワークです。私たちは「オープン」と「コラボレーション」をキーワードにみなさまと協業して新しいサービスや価値を創造していきたいと考えています。




第二部 地方を変えれば日本が変わる
慶應義塾大学教授・元宮城県知事 浅野史郎氏

怒りは関心の始まり、関心は行動の始まり
3期12年にわたって宮城県知事を務めた浅野史郎氏。翌日に60歳の誕生日を迎えるとは思えない若々しさで、講演会本番の30分ほど前から「前座」と称しスピーチを開始。メタボリック症候群のため食事制限をしたり、ジョギングをはじめ、体質改善に努めたエピソードを披露するなど、本番も含め約2時間、ユーモアたっぷりの巧みな話術で聴衆の心を釘付けにしました。

「日本は変えなければいけないのに、なかなか変化しない」という浅野氏。特に解決しないのが政治と金の問題。さらに格差や暫定税率の問題、テロ特措法、年金問題など問題は山積しています。

中でも政治と金は国民も見過ごすことのできない問題です。「政治家の常識は大阪府民の非常識」と浅野氏。厚生省の官僚だった浅野氏が宮城県知事に出馬したのも政治と金の問題が背景にあったため。当時宮城県では前知事がゼネコン汚職で逮捕され、それを受けて出直し選挙が行われました。当初出馬を打診されたときには様々なしがらみを断つため、これを拒否。しがらみのない状態で公示3日前に厚生省を退職、知事に立候補しました。

対立候補は圧倒的な本命とされた前副知事。ほとんど勝つ見込みのない選挙、負け試合といわれながら、結果は29万票対21万票で浅野氏の圧倒的な勝利。「これは宮城県民の怒り、ゼネコン汚職を無くしてほしいという宮城県民の思いだけで勝った」と当時を振り返ります。さらに「政治と金の問題については怒りを継続させ、行動で表してほしい。怒りは関心の始まり。関心は次の行動の始まり。行動で世の中を変える。地方が変われば日本が変わる。その主役は皆さんなんです」と浅野氏は熱く語ります。

必要なのは地方の体質改善
一方で地域間格差もなかなか是正されない問題です。そのために必要なのは「地方の体質改善」と前座の話がここで生きてきます。これは格差ではなく「違い」と強調されます。どちらが勝っている、どちらが偉いというのではなく、都市には都市の、地方には地方のよさがあります。それぞれがナンバーワンになれるわけではありませんが、スペシャルなもの、オンリーワンなものがあるといいます。

その好例が熊本県の黒川温泉。黒川温泉は温泉宿29軒、キャパシティ650人の小さなひなびた温泉街。ほとんど知られていない存在でしたが、観光カリスマと呼ばれる後藤哲也氏が、たくさんの人を呼びたいと自分の旅館の裏山に洞窟温泉を作ったことから変化が始まりました。後藤氏は日本各地の人気の温泉に出かけ、お客さんの声に耳をかたむけた結果人々が「いやし」を求めていることに気づきました。

黒川温泉のような人里離れた温泉の方が「いやし」にはプラスであると考え、さらにスペシャルなものを作るため露天風呂を磨き、料理や庭にも手を入れました。これに連鎖するように他の旅館も改装し、料理の水準を上げていきました。露天風呂を作れない旅館もあるため黒川温泉内の3つの温泉に自由に入れる「入湯手形」を発行するなど様々なスペシャルが生まれました。これによって黒川温泉は旅行雑誌でトップの評価を得る、人気の温泉に。以上の話は、実のところある人の受け売りとことわりながらも、これなどは体質改善によって地域全体が変わった例と語ります。

浅野氏は「地域の底力が付くと、地方が底上げされ、日本全体が住みやすくなる」と指摘します。さらに「みんな関心を持ってほしい。地方自治は民主主義の学校。まずは入学して。地方を変えれば日本が変わります。その基本にあるのは民主主義。ますは関心を持つことから」と講演を締めくくりました。

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